26 財務諸表と経営数字のセミナーに参加 数字の苦手意識がなくなった。

 奈須は、出張で日総研の「看護管理に必要な数字の“超”イロハ」というセミナーに来ている。病棟の管理をより深く理解するための、病経営数字に関する勉強会である。セミナーで、病棟経営に関する指標や数字的なセンスを磨くことはできるのだろうか?セミナーの講師は、先日、病院の研修会でお会いした大木さんであった。

大木:今日は、管理に関する数字の見方と病院にかかわる財務諸表、財務諸表と病院管理指標との関連について、話をしたいと思います。先ず、管理にかかわる。数字の見方について説明します。そこで、最初にエクササイズをしたいと思います。皆さんは、このエクササイズ1の図を見て、どう思いますか?誰か、勇気のある方いますか?」

奈須:私が答えてもいいですか?私が、思うに、値段が安いですね。これ全部が2,000円であれば、私は買います。

大木:それでは、エクササイズ2を見てください。先ほどの2,000円のフルーツの中のリンゴが実は、1,000円だったとします。そうしたらどう感じますか?」

奈須:リンゴ1個1,000円は高いですね。リンゴを抜いて、買うことができるか交渉します。

大木:そうです。数字の見方の基本は、数字をどのように判断するかが重要なのです。その判断のために、数字を使うのです。判断するためには、わかりやすいところまで分解することです。病院経営や病棟の経営をしていくにあたり、様々な管理に関する数字が飛び交っています。その数字を自分の見慣れた数字まで、分解することにより、判断ができ、業務に生かすことができます。これが分析です。皆さんは、エクササイズ1エクササイズ2を通して、分析をしましたよ。

 数学が苦手だと思っていた聴衆も何となく、数字に対する苦手を変えることができそうな気がした。

大木:次に私が説明するのは、病院経営や管理に関する用語です。スライド9からスライド11で示します。病院経営と数字に関する用語だけでこんなにあります。これは、地方公営企業年鑑から持ってきた数字なのですが、用語を大きく分けると「財務会計系」「業務系」「経営分析系」の3種類に分けられます。どれも似たような用語で難しく感じられるかもしれません。私もこれらの用語を全部暗記しているわけではありません。全部暗記するのは、不可能です。でもなぜ、企画部門として病院経営のお手伝いができるのでしょか?それは、これらの管理に関する用語がどのような位置づけになっているのか、いつもすぐに調べるようにしてあるからです。それと、いつも、使うものは、限られています。

(スライド10)

(スライド11)

 次に、財務諸表について説明します。財務諸表は、損益計算書と貸借対照表などが含まれ、決算書とも呼ばれるものです。貸借対照表は、病院の一定点における、病院の状態を表した財務の数字です。例えば、3月31日現在、お金をいくら持っていて、借金がいくらあるといったことを表します。損益計算書は、一定期間の病院の活動を表した財務の数字です。例えば、4月1日から翌3月31日までの売上やかかった費用についてまとめてあります。この一定点の静的な状態と一定期間の動的なものを示した書類を財務諸表といっています。財務諸表の面白いところは、(スライド12)の右と左がバランスが取れ式が成り立っています。貸借対照表は、資産=負債+資本、損益計算書=費用+利益となります。この式が成り立っています。そうするとわかってくるのが、損益計算書の利益を伸ばそうと思うと、売上を伸ばして、費用が変わらなければ、利益が大きくなります。また、売上が一定であっても費用が小さくなれば、利益が大きくなります。そんなこともわかるのです。

 次に、スライド9スライド12を合体したものをスライド13とします。これは病院の経営数字を損益計算書に当てはめたものです。こうやって、図示して整理すると非常に分かりやすくなります。例えば、売り上げを伸ばすためには、さまざまな収益が増えればいいということがわかります。そこで、スライ14では、収益について考えます。総収益は、医業収益と医業外収益、特別利益を合わせたものとなっています。さらに、この中で、医業収益に注目してみると、医業収益は、外来収益と入院収益、その他医業収益の合算であることが分かるのです。そこで、外来収益を分解してみると、外来単価と外来患者数の掛け合わせたものということが分かります。外来単価は、基本診療料と特掲診療料と言う診療報酬に行きつくことが分かるです。これで皆さんも、診療報酬点数が下がるということは、病院にとって死活問題になることが分かったと思います。それと、外来患者数が減少するということも病院経営にとって悪いことだということが分かります。このように収益を分解をしていき、外来の単価が高いのか低いのか、外来患者数が多いのか少ないのかといった分析をしていきます。これは、入院収益についても同様です。病院は、外来収益よりも入院収益の方が大きいので、入院収益を上げる努力が必要となります。これは、病棟を管理している師長さんの使命であることは間違いありません。

(スライド13)

(スライド14)

セミナーが終わり、これまで、師長会で提示されていた様々な統計データが、病院経営と密接であることがわかった。奈須は、自分で入院収益との連関図を図12)のように描いてみた。

奈須:入院収益は、入院単価と入院延べ日数を掛け合わせたものであり、入院単価は、入院基本料と特掲診療料の合計額、入院延べ日数は、病床稼働率と稼働日数を合わせたものなのね。基本診療料は、入院基本料だから、病棟の看護体制によって決まるわけか。特掲診療料は、投薬や検査などだから、手術が多い外科病棟なんかは、入院単価が高くなる傾向にあるのね。病床稼働率は、1日当たりの病棟の入院患者数に関係があることも分かった。稼働日数は、1カ月だと30日か31日、1年間だと365日かな。こうやって書いてみると、自分のやるべきことがわかったわ。何でもっと早く、教えてもらえなかったのかしら。

 たまには、管理を真剣に考えることはいいことです。一度、皆さんも管理に関する数字を整理してみてはいかがだろうか。